「php + apache のメモリ量をおさえる」の続きです。
さて、今回は、メモリをおさえるためにapacheのマルチプロセッシングモジュール (MPM)を変更してみようと思います。
apacheのマルチプロセッシングモジュール (MPM)の一つであるプロセス制御(prefork)では、それぞれにプロセス間でメモリの共有はできませんが、
スレッド制御(worker)においては、1つのプロセス内であれば、メモリの共有がいくらかできます。
そのため、マルチプロセッシングをスレッド制御(worker)へ切り替えることで、多少は、メモリの削減につながるでしょう。
また、プロセス制御(prefork)に比べれば、スレッド制御(worker)は、クライアントへのリアクションも良いので、一石二鳥ですね。
そこで、今回は、このworkerを使ったApacheの起動について、簡単なやり方を解説してみます。
※prefork,workerについては、「php + apache のメモリ量をおさえる」を参照してください。
- 目次
- 履歴
2010年12月10日 初版
apacheのデフォルト設定を変更します
CentOSで通常インストールされるApacheは、プロセス制御(prefork)とスレッド制御(worker)に対応しています。
そのため、何も問題なければ、以下のようにやればOKです。
- httpdを停止
$ /etc/init/d/httpd stop
- /etc/sysconfig/httpdを編集して、workerへ切り替えて
$ vi /etc/sysconfig/httpd ... #HTTPD=/usr/sbin/httpd.worker # ↓コメントをはずすだけです。 HTTPD=/usr/sbin/httpd.worker
- httpdをスタート
$ /etc/init/d/httpd start Starting httpd: [Fri Dec 30 19:10:31 2010] [crit] Apache is running a threaded MPM, but your PHP Module is not compiled to be threadsafe. You need to recompile PHP. Pre-configuration failed [FAILED]
・・・・と エラーで起動できません。
このエラーは、phpモジュールはスレッドセーフじゃないから、phpをリコンパイルしてスレッドセーフなモジュールにしてね。・・・というエラーです。
とりあずえ、phpを使う場合、そのままでは、できないことはわかりました。
エラーメッセージのとおり、phpをスレッドセーフなものに入れ替えないといけないようです。Windows版では、バイナリが提供されていますが、
Linuxでは、バイナリのRPMは提供されていないようで、自力でコンパイル?しないといけないようです。
続けて、phpのリコンパイルです。
phpリコンパイルする
phpをスレッドセーフ用にリコンパイルするには、まずは、ソースコードから入手しなければなりません。
ここでは、あえてphp5.2を使っていますので、ここでも5.2を使ってみます。
- php5.2のソースコードを入手します。
ここは、「php 5.2系で APC (Alternative PHP Cache) をインストールする」でも説明しているサイトからソースコードを入手します。
$ wget http://dl.iuscommunity.org/pub/ius/stable/Redhat/5/SRPMS/php52-5.2.14-1.ius.el5.src.rpm
ここでは、php5.2.14のソースコードを取得していますが、必要に応じてバージョンおよびファイル名を変更してください。
また、該サイトにあるソースのバージョンは、http://dl.iuscommunity.org/pub/ius/stable/Redhat/5/SRPMS/で直接確認できます。 - php5.2のソースコードをインストールします。
先に入手したソースコードは、rpmですから、単純にrpmをインストールします。
$ rpm -ivh php52-5.2.14-1.ius.el5.src.rpm
ここで展開するrpmの場合、/usr/src/redhat/SOURCES というディレクトリが存在しない場合は、以下のようなエラーが表示されることがあります。
その際は、単純にmkdir コマンドで/usr/src/redhat/SOURCES というディレクトリを作成して、再度、実行します。エラー: %sourcedir を /usr/src/redhat/SOURCES に作成できません。
また、ソースコードを展開するとき、
という警告文が大量出力されるかもしれませんが、これは、単純に警告: グループ mockbuild は存在しません - root を使用します 警告: ユーザ mockbuild は存在しません - root を使用します ...
「ソースコードの所有者グループ、ユーザ名が存在しないのでrootにしました」
という警告文なので、無視してもOKです。
- コンパイル環境を整えます。
コンパイラの環境とphpをコンパイルするためのライブラリがないと、phpをコンパイルできませんから、その環境を整えます。
- gccコンパイラをパッケージをインストールする。
gccのgccとgcc-c++が必要です。
必要なパッケージが既にインストールされているか確認します。$ rpm -qa | grep gcc libgcc-4.1.2-48.el5 libgcc-4.1.2-48.el5 gcc-4.1.2-48.el5 gcc-c++-4.1.2-48.el5
こんな感じでインストールされていれば良いですが、インストールされていない場合は、以下のようにインストール行います。
$ yum -y install gcc gcc-c++
- phpをコンパイル条件にスレッドセーフを設定します。
$ cd /usr/src/redhat/SOURCES/SPECS $ cp php52.spec php52.spec.org $ vi php52.spec ... # Shell function to configure and build a PHP tree. build() { # bison-1.875-2 seems to produce a broken parser; workaround. mkdir Zend && cp ../Zend/zend_{language,ini}_{parser,scanner}.[ch] Zend ln -sf ../configure %configure \ -with-tsm-pthreads \ --enable-maintainer-zts \ --cache-file=../config.cache \ --with-libdir=%{_lib} \ ...
もしも編集に失敗した場合のため、あるいは通常のコンパイルを行いたいときのために、一旦、オリジナルファイルをコピーした後、編集をしています。
上記のように この文字色の箇所(2行)を追加します。 - 必要なライブラリをインストールする。
$ yum -y install apr-devel apr-util-devel aspell-devel autoconf automake beecrypt-devel bzip2-devel curl-devel cyrus-sasl-devel db4-devel e2fsprogs-devel elfutils-devel elfutils-devel-static elfutils-libelf-devel elfutils-libelf-devel-static expat-devel fontconfig-devel freetype-devel gcc-c++ gd gd-devel gmp-devel httpd-devel imake keyutils-libs-devel krb5-devel libc-client libc-client-devel libgcrypt-devel libgpg-error-devel libidn-devel libjpeg-devel libpng-devel libselinux-devel libsepol-devel libstdc++-devel libtool libX11-devel libXau-devel libXdmcp-devel libxml2-devel libXpm libXpm-devel libxslt libxslt-devel lm_sensors mesa-libGL-devel mysql mysql-devel ncurses-devel net-snmp net-snmp-devel net-snmp-libs openldap-devel openssl-devel pam-devel pcre-devel perl-DBI pkgconfig postgresql postgresql-devel rpm-devel sqlite-devel unixODBC unixODBC-devel xorg-x11-proto-devel zlib-devel mhash-devel freetds-devel libtool-ltdl-devel
もしも、必要なライブラリを正確にしりたい場合は、rpmbuildコマンドで必要なライブラリが表示されます。
のように出力されます。$ rpmbuild -bb php52.spec エラー: ビルド依存性の失敗: bzip2-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています curl-devel >= 7.9 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています gmp-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています aspell-devel >= 0.50.0 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libjpeg-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libpng-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています pam-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています sqlite-devel >= 3.0.0 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています smtpdaemon は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています readline-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libtool >= 1.4.3 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています elfutils-libelf-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libc-client-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています postgresql-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています unixODBC-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libxml2-devel >= 2.6.16 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています net-snmp-devel >= 5.1 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libxslt-devel >= 1.1.11 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています ncurses-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています gd-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています freetype-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libtidy-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています libmcrypt-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています mhash-devel は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています freetds-devel >= 0.64 は php52-5.2.14-1.ius.x86_64 に必要とされています
※ここで出力されるライブラリは、各環境で異なりますので、必ず、ターゲットのサーバー上で確認しましょう。
また、ここでyumコマンドで、バージョンの違いなどから、うまくインストールできないものも中にはあります。
その場合でも、一旦、yum uninstall でアンインストールをしてでも、必ず、ここでインストールを完了しておきます。
- gccコンパイラをパッケージをインストールする。
- phpをコンパイルします。
$ rpmbuild -bb php52.spec ...
特にエラーが表示されなければOKです。
もし、最後にエラーが発生した場合は、ここまでの環境の設定の見直しを行いましょう。
phpをインストールしなおす
最後にリコンパイルしてできたrpmから、再インストールを行います。
- /etc/sysconfig/httpdを編集している場合は、一旦、元に戻します。
$ vi /etc/sysconfig/httpd ... # 以下の箇所をコメントアウトします。 #HTTPD=/usr/sbin/httpd.worker
- Apacheを停止します。
$ /etc/init.d/httpd stop
- 現在使っているphpをすべてアンインストールします。
$ yum remove `rpm -qa | grep 'php'`
$ rpm -e `rpm -qa | grep 'php'`
rpmでインストールした場合は、上記のように一括してrpmで削除できます。
grep以降のキーワードを慎重に確認の上、実行しましょう。
ここで、/usr/src/redhat/RPMS/x86_64 (32ビット版は、i386) に最新のPHPのRPMが作成されているはずなので、今、インストールしているものとアンマッチをおこして、うまくアンインストールできないことがあります。
その場合は、/usr/src/redhat/RPMSのディレクトリ名を一時的に/usr/src/redhat/RPMS_BACK のように変更するとうまくいくことがあります。
- 新しく作成したphpをインストールします。
$ cd /usr/src/redhat/RPMS/x86_64 $ rpm -Uvh php52-cli*.rpm php52-pdo*.rpm php52-mysql*.rpm php52-common*.rpm php52-5.2*.rpm php52-devel*.rpm php52-gd*.rpm php52-mbstring*.rpm php52-odbc*.rpm php52-mhash*.rpm php52-snmp*.rpm php52-bcmath*.rpm php52-ncurses*.rpm php52-xmlrpc*.rpm php52-tidy*.rpm php52-xml*.rpm php52-mssql*.rpm php52-soap*.rpm php52-pgsql*.rpm
32ビット版CentoOSであれば、ディレクトリは、/usr/src/redhat/RPMS/i386 となります。
とりあえず、自分がインストールしたものを記述していますが、特に必要ないものもあるかもしれませんので、ご参考程度に。
pearが必要なら、pearのRPMを作成して、同じディレクトリにコピーしておく必要があります。その上で、php52-pear*.rpm を追記します。
pearは、これもソースコードから同じようにコンパイルして、インストールします。
ソースファイルは、php52-pear-1.8.1-2.ius.el5.src.rpm です。同じURLからwgetでダウンロードできます。
作成されるRPMは、/usr/src/redhat/RPMS/noarch になります。
- /etc/sysconfig/httpdを編集して、workerへ切り替えて
$ vi /etc/sysconfig/httpd ... # コメントアウトしていたい箇所をもとに戻します。 HTTPD=/usr/sbin/httpd.worker
- httpdをスタート
$ /etc/init/d/httpd start [ OK ]
これでできたはずです。
確認は、以下のコマンドでできます。$ ps aux|grep http root 4932 0.0 3.6 325296 18608 ? Ss 02:56 0:00 /usr/sbin/httpd.worker apache 6023 4.6 20.2 799248 103176 ? Sl 09:06 0:04 /usr/sbin/httpd.worker apache 6025 1.1 8.5 739084 43528 ? Sl 09:06 0:00 /usr/sbin/httpd.worker root 6080 0.0 0.1 65424 812 pts/0 S+ 09:08 0:00 grep http
最後が、httpdの実行形式になります。ちゃんとhttpd.workerになっていればOKです。
なお、APCなどのphpアプリケーションは、再インストールの必要があるでしょう。
APCは、「php 5.2系で APC (Alternative PHP Cache) をインストールする」を参照してください。もし、既にインストールしているなら、一旦、アンインストール(pecl uninstall apc )が必要になります。
これで実行するとデフォルトでは、プロセスが2つになりました。 とりあえず、起動した時点では、メモリは少ないですね。
次回に、細かい設定について記述したいと思います。
このサイトでは、コンテンツの一部が非表示、あるいは、コメント、お問い合わせの投稿ができない、検索ができないことがあります。
コメントを投稿 :